根本的な部分へのアプローチ サッカーの練習だけでは変わらないこと
私たちは、日本のサッカーを強くするために、子どもたちに何をどのように教えていったらいいのかをずっと考えてきました。
初めのうちは、サッカーのプレー自体のことばかりに目を向けてきました。
どういうプレーを、どういうふうにトレーニングしていったらいいのだろうか。
そういうことを中心に考えてきました。
しかし、最近になって、「判断」が足りないことに気づきました。
日本の選手は言われたことを言われたとおりにやることには非常に優れていますが、
とっさのとき、状況が変わったときに、自分自身で的確な判断を下して行動することが苦手です。
サッカーは広いピッチで11人の味方が協力し合って11人の相手に対し、
1つのボールをめぐってプレーするスポーツです。
しかもボールを足で扱うものなので、手を使うほど正確にはいかず、さまざまな状況が起こります。
いつもコーチが指示したとおりのことばかりが起こるわけではありませんし、
仲間と相談しながらやれるわけでもありません。
そんな中で、いつも自分自身で状況を把握して、最善と思う判断をし、
それに基づいて行動をしなくてはならないのです。
決められたとおり、指示されたとおり、言われたとおり、だけでは、とても対応しきれないのです。
自分で判断する。その判断に責任をもつ。
そしてみんなで協力して状況を解決していくために、自分の考えたことを相手に伝える。
当たり前のようで、なかなかできていないことです。
私たちは、子どもたちの自立を促したいと思っています。
しかしそれは、ピッチ上、すなわちサッカーの試合やトレーニングの場の中だけで心がけていても決して身についていかないことです。
サッカーの場だけ、コーチに言われたときだけ、では、決して真の自立にはいたりません。
学校や家庭、みなさんの協力が不可欠です。
論理的に考える力を引き出す 子どもを自立させるために
ピッチの上では一人一人が自立して判断することを求められるスポーツ、それがサッカーです。
ピッチ上で、自分自身で考え、判断できる子どもを育てるためには、
指導者と保護者の連携が必要です。
子どもが今まで以上に実力を発揮できるようになるために、
自分自身の力で判断する力を子どもから引き出しましょう。
子どもを自立させるためには、言葉によるトレーニングが非常に効果的です。
身体を使って行うスポーツであるサッカーと言葉は一見関係がなさそうです。
しかし、刻一刻と変化する状況の中で即座に的確な判断を下すことを要求されるサッカーでは、
考えるための道具を備えていることが非常に重要です。
それが言葉です。日常の家庭生活の中で子どもに言葉を使って考える機会を与えましょう。
考える力は必ずサッカーに生かされるでしょう。
察しの悪い振りをする
子どもの考える力を伸ばすためには、保護者は「察しの悪い振り」をしましょう。
ただしそれは、子どもの考えを理解しないとか、子どもの気持ちを無視する、
ということとは違います。
子どもが何を考えているのか、子どもが何を求めているのか十分に察知し理解できるけれど、
あえてわからない振りをして、子どもに自分の考えを言葉に出して表現させること、
それが「察しの悪い振り」をする目的です。
「何となく」「ビミョー」を許さない
子どもに何か質問すると、「何となく」「知らない」「わからない」「ビミョー」などと
曖昧な返事が返ってくることが多くなりました。
こうした返答はコミュニケーションの放棄です。
他人と深いコミュニケーションを結べなくなるばかりでなく、
物事を掘り下げて考える習慣が身につけなくなります。
子どもの曖昧な返事に対抗するには、それらを決して許さないという毅然とした態度を親がとること、
そしてそうした返事のくり返しが自分にとって不利益だということを子どもに理解させることが大切です。
具体的に考える機会を与える
子どもの言葉は、印象を語っただけで終わってしまったり、
感覚的な言葉だけで伝えようとしたり、オノマトペ(擬音語)だけで全てを語ろうとすることが多いものです。
大人が「そうかぁ、おもしろいからサッカーが好きなのか」と納得してしまうと、
子どもはそれ以上深く考えません。
印象の中身を掘り下げて考えたり、音で表現した中身を
具体的な言葉で言い換えたりすることができるようになると、
さまざまな場面で必要に応じて自分の感覚や印象を
具体的な言葉で表現する能力が身につくでしょう。
論理的に考える機会を与える
子どもに論理的に考える習慣を身に付けさせましょう。
子どもにとって論理的とは、根拠に基づいて考えるということで、厳密な意味での論理ではありません。
子どもが何か考えを述べたら、必ず「どうして?」と理由を尋ねるようにしましょう。
その環境に慣れてくると、子どもは問われなくても自分から「理由は、何故かというと、どうしてかというと」
と根拠を述べるようになるでしょう。
日常生活の中で理由を問うのが難しければ、
自分の考えを述べるゲームを子どもと一緒にやりましょう。それには「問答ゲーム」が有効です
「問答ゲーム」のルールは簡単です。
1、結論を先に言うこと(「好き」あるいは「嫌い」と先に自分の結論を言います)
2、理由を述べること
3、大きな声でみんなに聞こえるように話すこと
…これだけです。
5W1Hをフル活用
子どもは自分の思いだけを最優先で伝えようとします。
そのため、必要な情報が抜け落ちます。こうした状況を放置すると、
子どもは情報の抜けを意識して話せるようにはなりません。
情報を検討するためには、次のようなセンサーを身に付けることが大切です。
子どもの体内に5W1Hをセンサーとして設置するためには、
親が子どもの言葉によく耳を傾け、言葉の抜けを常に指摘するように心がけることです。
つまり、5W1Hを手がかりに質問します。
こうした状況がなじんでくると、子どもは自分から5W1Hを用いて話をするようになります。
栄養・食習慣
しっかりとした食習慣を身につけさせるには、家庭の協力が不可欠!
元気にスポーツするには、毎日の食事をしっかりとることが重要です。
子どものときにしっかりとした食習慣を身に付けさせましょう。
嗜好品グループ
油脂・砂糖などを使ったおやつ。バランスの良い栄養素はのぞめないが、
食事全般に味わいや風味をもたらし、満足感を与える。
頂点にあるので、下に支える5つのグループの食品をバランスよくとったあとで食べるのがよい。
牛乳・乳製品グループ
牛乳・ヨーグルト・チーズなど乳製品と呼ばれるグループ。
タンパク質だけでなく、カルシウムを多く含む。
子どもの頃からしっかり乳製品をとっておくと強い骨づくりの土台になる。
肉・魚・卵・豆グループ
動物性タンパク質の肉・魚・卵、植物性タンパク質の豆などからなるグループ。
ただし動物性食品にかたよると、脂肪もとりすぎてしまうので、
動物性・植物性食品をバランスよく食べること。筋肉や血液などの体のもとになる。
野菜グループ
ビタミン・ミネラル・食物繊維を豊富に含むグループ。
ビタミンは体調を整え、他の栄養素が力を発揮する手伝いをする。
カルシウム、鉄といったミネラルは体の各組織を構成する。
また、食物繊維は排泄のサポートなどをする。
果物グループ
果物は糖質・食物繊維・カリウム・ビタミンなどの栄養素を豊富に含む。
調理をする必要が少ないので手軽にとれる。
また、加熱によってカリウムやビタミンCが失われる心配がない。
常備しておくと便利なグループ。
穀物グループ
米・パン・麺類など、主食となるグループ。
糖質・ビタミンB郡・食物繊維を豊富に含んでいる。
糖質は脳や体を動かすエネルギー源。
また、ビタミンB群を同時にとることで効率よくエネルギーに変えることができる。
スポーツ前後の補食
朝・昼・夕食のほかに、練習の前後には補食をとるようにしましょう。
空腹を満たすのではなく、練習で必要となるエネルギーを蓄えることが、
運動選手にとっての補食の役割です。
おにぎり 飲むヨーグルト、菓子パン(肉まんなど) 牛乳のような、
炭水化物を多く含む食品と乳製品や、果汁100%のジュースの組み合わせがおすすめです。
その他、バナナやオレンジなどの果物やエネルギーゼリーなど、
手軽に食べられる食品も良いでしょう。
子どもの成長 子どもの成長に合わせたサッカーの大切さを理解してください
子どもたちはプロ選手になったような気持ちでプレーします。
あこがれの選手のプレーをまねします。一人ひとりが皆スター選手です。
でも、子どもは小さな大人ではありません。
8人でやったり4人でやったり、ボールを2~3個使って大勢でやることもあります。
ルールもできるだけ簡単にそしてゆるやかに適用します。
1個のボールを競うときに多少の身体接触は避けられません。
ときには足をけったり、引っかけたりすることもあります。
意図的な乱暴なプレーはいけませんが、必死にボールを追いかける中でのアクシデントに対しては、
反則にするのではなくできるだけプレーを続けさせたいと考えています。
子供たちも意外に平気です。転んだらすぐに起き上がるし、
少しぐらい痛くても絶対にボールを取られないぞと気迫を見せてくれます。
そんな姿を大切にしたいと考えています。
6歳以下の子どもたちのゲームを観てみてください。
目をきらきらと輝かせながらボールを見つめています。
彼らにはボールしか目に入っていないようです。
味方も相手も関係なく自分とボールだけの世界でゴールを目指します。
1個のボールに何人もの子どもたちが集まってきます。
私たちはそれで良いと考えています。そんな状況をこの年代でたくさん経験させたいのです。
そして少しずつ仲間との関係でプレーすることを学んでいけるように指導しようとしています。
小さいときからサッカーだけプレーしていれば良いかといえば、それは「NO」だと考えています。
9歳から12歳ごろを私たちはゴールデンエイジ(黄金の年代)と呼んでいます。
いろいろな運動技能が比較的簡単に習得でき、サッカーのあらゆる技能を身につける絶好の年代なのです。
しかし、そのためにはサッカーだけではとても足りません。
ボールを投げたり捕ったりすることも大切です。
全身で力を出すようなことも必要です。
また鉄棒や縄跳びなどで、いろんな技に挑戦する機会を持つことも有効です。
小学校の低学年からサッカーだけに偏ることなく、多くの運動に接するチャンスをぜひつくってください。
日本サッカー協会では6歳から16歳までの指導のガイドラインを2歳刻みで提示しています。
それぞれの年代で与え、克服していかなければならない課題を示しています。
それは一人ひとりの選手が大人になったときにできるだけすばらしく成長してほしいという長期的視野に立って考えられています。
それぞれの年代に応じたサッカーの経験が、最後に大きく花開くことになることを理解し、
子どものサッカーを見守り成長を楽しんでください。
子どもが主役 子供の成長に合わせたサッカーの大切さを理解してください
子どもたちがサッカーに夢中になって取り組んでいる姿を見て、
保護者として何かをしてあげたいと思うのは自然な気持ちです。
練習への送り迎えや、お弁当作り、たくさんの洗濯物にちょっと閉口してしまうこともあるかもしれません。
しかし、ピッチでボールを追いかけるわが子を見ると、「しっかりがんばれ!」と応援せずにはいられません。
最初はボールを上手に蹴れず、仲間の後ろに付いて回っていた子どもが、
どんどんたくましくなっていきます。
ゲームに勝って喜び、負けて悔しがる。
シュートが決まったと胸を張り、ミスしてしまったことに肩を落とす。
そんなわが子がいとおしく何かをしてあげなければと思うことも保護者としては当然です。
社会の中に多くのマナーがあるように、サッカーを楽しむためにもマナーがあります。
サッカーに必要なマナーをきちっと教えていくことは保護者としての大切な役割です。
そして、みなさん自身がマナーを守ることは言うまでもありません。
ここではみなさんが主役です。
しかし、サッカーでの主役は子どもです。
子どもたち自身が考え、感じ、判断し、プレーしたことを認めてあげてください。
それがうまくいかなくても、決して責めないでください。
勝っても負けても大きな拍手。良いプレーには味方、相手関係なしに拍手。
そんな素敵な応援が子どものサッカーを盛り上げます。
めざせ、ベストサポーター
子どものために良かれと思うその気持ちが最適な方向になるために。
「Navi.1 サッカーは子どもを大人にし、大人を紳士にする」